ストレンジャー・ザン・パラダイス

この映画をはじめてみたのは学生の時だった。
私は田舎から出てきたばかりで、東京という街に大きな期待をもっていた。
この街が、つまらない田舎娘にしかすぎない自分を、何ものかに変えてくれると信じていたのだ。


さて、当時の自分がこの映画にもった感想というのは、こじゃれた、前衛的な作品だなという程度のものだったと思う。
当時の私は、この内容に共感するには期待や希望がありすぎたし、なんといっても若すぎた。
ただ、荒涼としたアメリカの風景と、映像の雰囲気は好きになった。
とりわけ、エヴァがテープレコーダーで繰り返し聞いている、ジェイ・ホーキンスの音楽が気に入った。
その後私はジェイのCDを手に入れ、それは今も手元にある。


今この映画をみて思うのは、私もこの気分がわかる程度には歳をとった、ということだ。
ブダペスト、ニューヨーク、クリーブランド、フロリダ。
どこへ行こうと風景は変わらない。
そこでは同じように退屈な日々と、かわりばえしない自分がくりかえされる。
エディはこう言っている。
「新しいところへ来たのに、何もかも同じに見える」


ここに居ようが、どこかに行こうが、ストレンジャーなのかもしれない。
モーテルへと戻ってきたエヴァのように、私もまた戻ってきたのだ。


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